2016年12月23日

20th Anniversary 非圧縮リマスター3部作!

Cbc2016 ミルクセーキ唐P の原点!
20周年アニバーサリー「無圧縮 リマスターシリーズ」3タイトル完結!
ハイレゾを最大限に活かすためリミッター無しの非圧縮マスタリング!

 

 

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というわけで「20周年記念・リマスター」シリーズが今回のリリースで無事完結しました。
まずはおさらい。今までの2作!解説をしっかり読んで下さいね(笑)。

 

無圧縮ひつじSongs! 」(e-onkyo mora)。
無圧縮 to You」e-onkyo mora)。

 

 

というわけで、今回は第3弾「無圧縮 Cold But Cute」です。厳密に言うと、今回だけ20周年ではないですが、ツイッターでのアルバム告知で言ったとおり、今回は「湾岸船橋スタジオ・レコーディングの集大成」リマスターだった、ということでよいのではないかと思います。

 

ジャケット写真にあるとおり、当時私はホテル勤務をしていました。ドラマー&バンド活動を辞め、ホテルの仕事を毎日しながら自宅で作品を作り貯めていたのです。
同僚のホテルマンたちはみんなノリの良い人々で、とてもありがたいことに、僕のそういった活動にも興味を示してくれたので、出来た作品を「カセットアルバム」のような形で頒布するようになりました。いま振り返って考えてみても、この「同僚というリスナーが居たこと」「その彼らからのフィードバックがあったこと」というのが、実はとても重要だったなと思います。それなしではここまで作品を作り続けられたかどうかわかりません。本当に感謝します。
旧版「Cold But Cute」は、そんなホテル時代の3年間に、友人知人同僚たちに頒布した作品の中から抜粋した選曲となっているのですが、今回は、当時の頒布作品「ほぼ全曲」をボーナス・トラックとして追加収録しました。
そういうことなので、これらの追加ボーナストラックは初公開なのではなく、当時の知り合いがみんな持っていたものです。そういう意味では僕にとっても、また当時のみんなにとっても、凄く懐かしいのではないかと思います。

 

聴くと分かる通り、それらの中には、今となれば「習作」扱いされるべきものもあるかと思います。また、後にアレンジを流用したり、後年リリースした曲の元ネタ的な作品もあります。そういうこと含めて全てが「90年代・湾岸船橋」時代の記録だと考えたのです。

 

今回の最終トラックでボーナストラック「湾岸船橋 1993 Club MIx」を収録したのは、そういう理由です。当時入手したばかりのデジタル・マルチトラック・レコーダーに「ナマの雷鳴」やら「前衛的ピアノ」「フィードバックギター」などを録って遊ぶ、というのは、まさに街の外れ湾岸地域での一軒家だから出来たことで、それらの混沌としたミックスこそが、当時の湾岸船橋スタジオ風景そのものなのです。

 

 

20周年リマスター3部作でやりたかったこと。

 

そのひとつは何度も言ってますとおり、当時仕上げたままの「非圧縮マスター」を使用すること。
それプラス、当時完成させた「全てのミックス済み作品」を公開する、というのも大きな目的のひとつでした。つまり「湾岸船橋」時代の活動歴を「まるまる」リリースする、ということです。
これはどういうことかというと、いうなれば「僕の遺言」です。知人に頒布したり、レコード会社や音楽事務所に送ったり、そのように外に向けてバラバラと放ってしまった90年代の僕の曲を、全てもう一度まとめて、発信元のマスターから再放流したかった、ということなのです。こうして再リリースしてしまえば、今後は、最新でベストな状態の全作品が世界中の何処かに必ず残ることになります。僕の手元から失われたとしても、僕自身が消えたとしても、世の中の何処かには残る、それでいいのだと思ったのです。

 

 

まとめ

 

今までの作品の詳細解説となります。
無圧縮ひつじSongs! 」解説。
無圧縮 to You」解説。

 

 

20周年シリーズのマスタリングについて
「無圧縮」というポリシーがあったため、コンプレッサー、リミッター等は通していません。
そのため、他アーティストの曲と混ぜて聴くと、音量が小さく感じられる場合がありますが、それは当作品の仕様となります。

 

 

「無圧縮ひつじSongs!」を聴いた皆様からの反応まとめ!
http://togetter.com/li/976598

 

 

非圧縮リマスターについて〜ラウドネス・ウォー(音圧戦争)とは

 

昨今のリマスターについて、一部から非常に批判の多い問題が一つあります。それは「音圧戦争(音圧競争とも言う)」です。

 

僕がこれらのアルバムを録っていた1996年当時、レコーディングやCD制作について「一般人が」出来ることは大変限られていました。全て手作業だったため、同じミックスを再現することは不可能でしたし、一度ミックスして「2MIX マスター」を作ってしまうと、それを加工することも非常に難しかったのです。せいぜい、コピー時にレベルを調整するとか、その程度しかできません。なので、例えば今のように「少々不揃いでも最後のマスタリングで綺麗に揃えればいいや」など後回しには出来なかったのです。なので、2MIX製作時に「完成版に近い状態のもの」を作らなければなりませんでした。そういう意味で、今回のアルバム曲は、全曲、マスタリングが不要なくらい、ちゃんと、あらかじめ揃えてMIXが作られているのです。
今回のリリースにあたって、それをそのまま活かしたいと。つまり、当時しっかり練って考えられていたダイナミックレンジやレベルなどを、そのまま加工せずにリリースしたいと考えました。そのまま、ということは、リマスターしない、ということです。音圧も上げず音色も加工せず。そもそも、それで大丈夫なように作ってあるのだから、余計な作業は要らないのだ、ということです。そうして「圧縮しない」マスターが、どんだけダイナミックレンジがあるのか、そこを是非、聴いて欲しいと思ったのです。

 

音圧がなく迫力がない、と言っても、それは同じ音量で比べるからで、普通にヴォリュームを上げていけば迫力ある音になりますし、むしろ、その強弱が豊かなダイナミックレンジや奥行ある音像に、初体験の方は新鮮な感触を覚えるかもしれません。

 

 

デジタル変換について

 

*レコーディングで使用したマルチ。→TASCAM DA88(48kHz、16bit)。
*ミックスで使用したミキサー。→MACKIE CR-1604(*Cold But CuteのみYAMAHA)。
*マスターで使用したテープ。→PCMプロセッサ(44.1kHz、16bit)。
*PCMマスターに施された「プリ・エンファシス」のDRを活かすため24bit 拡張変換。
★結果として20年目にして初の!デジタル44.1kHz、24bitハイレゾマスターが完成!

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2016年10月18日

「無圧縮 to You」20th アニバーサリー!

Toyou20thミルクセーキ唐P の原点! 20周年アニバーサリー第2弾!「無圧縮 to You」リリース!初の「真性デジタル・リマスター」版。当時のオリジナルPCMマスターからデジタルデータを直接24bitトランスファー。そのマスターをハイレゾで最大限に活かすためリミッター無しの非圧縮マスタリング!幻のトラック2を復活 & ボーナストラック4曲収録!

 

 

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というわけで「20周年記念・リマスター版」第2弾!となります。第1弾である「無圧縮 ひつじ Songs!」と同じく、非圧縮リマスターとなっておりますので、ハイレゾ環境をお持ちの方は是非ともハイレゾでお楽しみいただきたいと思います(前回詳細記事)。

 

今回のアルバム「to You」の特徴としては、なんと言っても「カバーされた曲」の多さがあります。初のメジャーシングルとなった「米倉千尋 / 夢見る Blue Moon」を始め、長崎アイドル・ミルクセーキの「日曜日は大キライ!」。そしてミルクセーキの歌姫ケイの「Fly Away(Flyaway〜両者のタイトルの意味は異なります)」のオリジナルバージョンが収録されており、カバーとの比較を楽しめます。また、他にもカバーを予定している収録曲があり、「どの曲だろう?」などと期待しつつ楽しむのもありかと思います。
このように、他の人にカバーされた楽曲が多い、ということは、当時の標準的J-POPに沿った楽曲になってきたということがあるのだと思います。これは今回自分でも改めて全体を聞き返して、如実に感じたことでした。前作「ひつじ Songs!」と今回の「to You」との違いは、JPOP商業的に成り立ちうるかどうか、ということだと思ったのです。
そうなった理由として、前回の記事でも言及しましたが、「ひつじ Songs!」をきっかけに、音楽関係プロダクションやレコード会社の方々とご縁が出来て、所謂「趣味的ではない」「プロフェッショナルで的確な指南」を受けたことがかなり大きいのです。その結果として、当時のJ-POP音楽市場に於ける「商品レベルとしての楽曲完成度」というものを、かなり意識することになった、ということでしょうね。

 

もうひとつ特筆すべき点があります。それは技術的なことになりますが、前作のアルバム制作で得た「レコーディング&ミックスのノウハウ」を、当作で進化させ昇華できた、ということです。
今回のリリースでは、リリース当時カットした楽曲を、敢えて「幻のトラック2」として復活させたのですが、この「トラック2」を含めた流れでアルバムを聞くと、全体的な緊張感が、全く違ってくることに気づきました。前述したとおり、当作は楽曲レベルが揃ったため、そちらについ耳が行ってしまうのですが、楽器演奏やミックス、ということについても、その進化がハッキリと感じられるのです。そういった点は、非圧縮リマスターであることで、よりいっそう伝わるのではないかと思います。
また、僕自身の「歌のレベル」も前作と全く違うのですね。それまで「ダブルトラック(重ね録り)」中心だったヴォーカルが、今回のアルバムでは、シンプルにシングルで歌い通している曲が多くなっています。完璧に歌い倒すんだ!という僕自身の気迫がビンビン伝わってくるのです。そういった意識の高さも、アルバムの緊張感に繋がっているのではないでしょうか。

 

今回も前回と同じく、初のデジタル変換を行いました。レコーディングやミックスの進化、楽曲力の向上なども、まるで当時のようにリアルに感じることが出来ます。復活した「幻のトラック2」を始め、「The Positive Song」のドラムが入ってくる箇所など、スリリングなミックスの生々しさは、デジタル変換でなくては味わえなかったと思います。これこそ、僕が当時スピーカーから実際に聞いていた音そのものですね。素晴らしいです。

 

このアルバムの特徴として、後半に行くにしたがってアレンジがあっさりしてくる、というのがあります。それは来たるべき「作家時代」を予感させます。アーティストとしてではなく、作曲家の楽曲ストックとしての制作、という流れに変化していくのですね。そんな90年代の終わり、そして20世紀の終わりの僕の流れを感じ取っていただければ幸いです!

 

 

今回のマスタリングについて
「無圧縮」というポリシーがあったため、コンプレッサー、リミッター等は通していません。
そのため、他アーティストの曲と混ぜて聴くと、音量が小さく感じられる場合がありますが、それは当作品の仕様となります。

 

 

ボーナストラック解説

 

Tr.02 20年前、リリース直前に外してしまった「2曲め」を今回復活。
これを含めた「8曲収録」が本来の「to You」の姿であり、完全版となります。

 

Tr.09 Positive Song のアーリーデモ。アレンジが全く違う。サビ以外のメロディも異なる。
着目点は演奏と歌とミックス。ギター&ピアノが左右に各2個ずつ&Bassが完全リンク演奏されている。

 

Tr.10 Tr.2の別ミックス。当時マッキー卓でアナログミックスにも関わらず、正規ミックスとほぼ変わらない。その再現力の高さと、僕の卓越したフェーダー操作が聴きどころである(違いは間奏のみ)。
*当時どちらを使用するか迷って、結局MIX2を選んだわけですが、その後、収録そのものが没になったわけで、当時の心境を窺い知ることが出来ます。更なるブラッシュアップを試み、次作でリメイク。「等身大 Memories」として生まれ変わり、やっと満足できる完成度となりました。

 

Tr.11 次作収録「エバグリ」初期デモ。サビのメロディが違うほか、全体にミックスが「to You」寄りである。

 

Tr.12 2012年制作。マルチトラックのソースから DAW でリミックスした「夢見る Blue Moon 2012」。現代の技術で MIX することにより、元の録音状態がどうだったのか確認できる。また当時と現環境での、音の解像度の比較のために収録した(これのみ 48/24)。
*当時この曲のミックス中に機材が故障し、作業が途中で止まってしまいました。つまり20年前のミックスは完成ではなかったということです。それを2012年に「満を持して」やり直したということになりますね。エンディングに追加されたコーラスなど、やっと正しい完成品にすることができました。16年後のリベンジだったわけです。

 

 

パーソネル
参加メンバー / いません!全部ひとりです。
Photo by ヒロヒロユキ
Design by souhaku(2016)
Digital Transfer by pontion(2016).

 

 

「無圧縮ひつじSongs!」を聴いた皆様からの反応まとめ!
http://togetter.com/li/976598

 

 

非圧縮リマスターについて〜ラウドネス・ウォー(音圧戦争)とは

 

昨今のリマスターについて、一部から非常に批判の多い問題が一つあります。それは「音圧戦争(音圧競争とも言う)」です。

 

僕がこれらのアルバムを録っていた1996年当時、レコーディングやCD制作について「一般人が」出来ることは大変限られていました。全て手作業だったため、同じミックスを再現することは不可能でしたし、一度ミックスして「2MIX マスター」を作ってしまうと、それを加工することも非常に難しかったのです。せいぜい、コピー時にレベルを調整するとか、その程度しかできません。なので、例えば今のように「少々不揃いでも最後のマスタリングで綺麗に揃えればいいや」など後回しには出来なかったのです。なので、2MIX製作時に「完成版に近い状態のもの」を作らなければなりませんでした。そういう意味で、今回のアルバム曲は、全曲、マスタリングが不要なくらい、ちゃんと、あらかじめ揃えてMIXが作られているのです。
今回のリリースにあたって、それをそのまま活かしたいと。つまり、当時しっかり練って考えられていたダイナミックレンジやレベルなどを、そのまま加工せずにリリースしたいと考えました。そのまま、ということは、リマスターしない、ということです。音圧も上げず音色も加工せず。そもそも、それで大丈夫なように作ってあるのだから、余計な作業は要らないのだ、ということです。そうして「圧縮しない」マスターが、どんだけダイナミックレンジがあるのか、そこを是非、聴いて欲しいと思ったのです。

 

音圧がなく迫力がない、と言っても、それは同じ音量で比べるからで、普通にヴォリュームを上げていけば迫力ある音になりますし、むしろ、その強弱が豊かなダイナミックレンジや奥行ある音像に、初体験の方は新鮮な感触を覚えるかもしれません。

 

 

今回のデジタル変換について

 

*レコーディングで使用したマルチ。→TASCAM DA88(48kHz、16bit)。
*ミックスで使用したミキサー。→MACKIE CR-1604(アナログ)。
*マスターで使用したテープ。→PCMプロセッサ(44.1kHz、16bit)。
*PCMマスターに施された「プリ・エンファシス」のDRを活かすため24bit 拡張変換。
★結果として20年目にして初の!デジタル44.1kHz、24bitハイレゾマスターが完成!

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2016年4月14日

「無圧縮 ひつじ Songs!」20th アニバーサリー!

Hituji20thミルクセーキ唐P の原点! 1996年リリース「ひつじ Songs」20周年アニバーサリー・バージョン遂にリリース!初の「真性デジタル・リマスター」版。当時のオリジナルPCMマスターからデジタルデータを直接24bitトランスファー。そのマスターをハイレゾで最大限に活かすためリミッター無しの非圧縮マスタリング!20年目のエンディングトラックを追加した完全版!

 

 

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*1年間限定だったため当作の配信は終了
無圧縮のこり2タイトルはコチラ

 

 

10年ひと昔と申します。では20年はふた昔となるのでしょうか。そして今この記事を読んでくださっている皆様、20年後の自分、というものを想像したことがありますでしょうか。
僕の実質デビュー・アルバム「ひつじSongs!」が完成して、なんと今年で20周年となります。自分の中で「卒業制作」と位置づけて制作に入ったアルバム。ラスト2曲の「君が好きだよ Song」そして「それぞれの夏休み」がレコード会社の方々の耳に留まり、僕はメジャーで作家デビューすることができました。つまり、このアルバムがなければ、今現在、こんなことをしていない、ということになるのですね。
いま僕自身が、こんな20年後を想像できましたか?と言われると、正直わかりません。でも、作品そのものについては、今も当時も素晴らしい物を作ったという自負があります。もちろん「自分比」ですけどね。
ということで、20年経ち、もういちどシビアなリマスターを施して、当時の完成度とやらを検証してやろうじゃないか、と。そんな想いから、20年目の再リマスター、しかも「初のデジタル変換!」というスペシャル仕様でハイレゾ配信のみ!という、記念すべきリリースとなりました。

 

 

今回のデジタル変換について

 

*レコーディングで使用したマルチ。→TASCAM DA88(48kHz、16bit)。
*ミックスで使用したミキサー。→MACKIE CR-1604(アナログ)。
*マスターで使用したテープ。→PCMプロセッサ(44.1kHz、16bit)。
*PCMマスターに施された「プリ・エンファシス」のDRを活かすため24bit 拡張変換(*)。
★結果として20年目にして初の!デジタル44.1kHz、24bitハイレゾマスターが完成!
(Digital Transfer by pontion.)

 

 

今回のマスタリングについて

 

今回は「無圧縮」というポリシーがあったため、コンプレッサー、リミッター等は通していません。また、オリジナルの質感を活かすためイコライジングもしていない。全体的に、ピーク直前となるレベル、4デシベルだけ上げた。またフェイドアウトに問題があるトラックが幾つかあったので、そこのみ修正しています。

 

 

20年目のエンディング曲を、ボーナストラックとして追加!
これは今回作ったものではなく、当時からすでに存在していたものです。したがってマスターも当時のものです。元々このトラックをアルバムエンディングとして予定していましたが、リリース直前になって「やっぱり蛇足ではないか」と感じ削除しました。今回はそれを「20年目の句点」として復活させ、完全版としました。

 

 

参加している人(Thanks to)
Guitars by Umada(Tr2・Tr4・Tr7) / Chorus by Kayo(Tr7・Tr10)
Photo by ヒロヒロユキ / Design by souhaku(2016)

 

 

聴いた皆様からの反応をまとめました!
http://togetter.com/li/976598

 

 

ちょっと長めのヒストリー

 

「ひつじ Songs!」のマスターは「PCM」という、当時でも非常に珍しいフォーマットで録られていました(業務用としてはCD用のマスタリングとして標準規格でしたが、民生用としては使っているヒトはほとんどいなかった)。
このPCMというのは、DATの前身と言える規格で、90年台にはDATにほぼ置き換えられ、僕のようなPCMを使ってる一般人は居なくなりました。つまり、これを再生できるのはもう自分だけ、という、絶滅寸前希少動物のような存在になっていたのです(僕がDATに乗り換えなかった理由はまた次の機会に)。

 

*参考資料
PCMプロセッサー
Wikipedia http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/pcm-501es.html

 

 

さて御存知の通り、CDやMD、そしてDATというデジタルメディア再生機には、当たり前のように「オプティカル」「コアキシャル」と言ったデジタル出力があります。これを使用すれば、古い音源だったとしても、現在でもデジタルのままパソコンなどに取り込んで劣化なしで変換ができます。
ところが、僕の使用していたPCMには、デジタルデータでありながら、デジタルアウトがついていなかったのですね。いまの常識で考えると不思議ですが、当時は、デジタル信号を出力する、という用途が日常的になかったので不必要だったのです。後々、僕の旧譜をリマスターする際に、この事実が大変なネックとなりました。
2006年、最初のリマスター版をリリースするとき、この「デジタルデータなのにデジタル変換できない」という壁にぶち当たり、マスタリングエンジニアとも方法を模索したのですが、結局、アナログで取り込むしかない、という結論になりました。というわけで、2006年リマスター(今まで売っていたもの)は、PCMを「アナログでアウトし」PCに取り込んだマスターなのです。

 

 

その後も僕は、このPCMデータのデジタル取り込みについて諦めませんでした。デジタルなんだから、デジタル出力する方法があるはずだ!という一途な思いで、方法を探り続けていました。ちょうどその頃からインターネットが盛んになり、いろんな情報が読めるようになりました。そうして日夜ネットサーフィン(死語)に励んだ結果、大変重要な情報を得ることになったのです。
それはなんと「デジタルアウトが付いているPCMの存在」でした。これは僕の持っていたPCMプロセッサの後継機種でして、民生用PCMとしては、コレが最終型でもありました。当時の僕は、そういう機種の存在をまったく知らなかった。驚くべきことでした。

 

*後継最終機種
http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/pcm-553esd.html

 

 

さっそくこの機種についての情報を集め始め、入手可能なのか、スペックはどうなのか、などいろいろ調べていったのです。そうして情報を集めた結果、以下の様な事が分かりました。

 

まず、機種そのものはネットオークションなどで、必ずしも「入手困難というわけではない」こと。

 

もうひとつ(ココが重要!)当時のPCMシステムは「音質向上のため、録音時に「エンファシス」という加工がされ、再生時にそれをディ・エンファシス(デコードのようなもの)するという行程がある」ということ。そしてデジタルアウトを使用した場合に限り、なんと!ディ・エンファシス「されずに」アウトされる!

 

つまり、この後継機種を僕が入手したところで、加工された音源を「ディ・エンファシス」できる環境がなければ、元の音質のままのデジタル変換にはならない!という事がわかったのです。…こうなると途方に暮れますね。どうやら自分の手に負えるような案件ではなさそうだ、というように、一気に絶望感が大きくなってきたのでした。

 

それでも諦めきれず、これに関する情報はないものか、なんとか方法はないのだろうか、と引き続きネットを丹念に検索し続けたところ、とある「超マニアックなオーディオに関する掲示板」にたどり着いたのです。その掲示板の、過去10年間に渡る過去ログのなかに、なんと!PCMのデジタル変換に関する話題を発見!そして!その中の投稿者のお一人が、「ディ・エンファシス」について、それが可能な環境を持っている、と書かれていたのです!

 

その方の投稿にはメールアドレスが掲載されていました。10年前の掲示板。そこに記載されているメールアドレス。果たしていまも有効だろうか。しかし、もうコレしかツテがないのです。僕は一縷の希望を託して、ダメ元でそのアドレスにメールを送付しました。すると!なんと返信が!!10年前のアドレスが生きていたのです!

 

その方(pontionさん)は音響関係&電子回路の設計者で、なんとプロの方でした。これは心強い。お任せ出来そうだ、と一気にテンションが上りました。
pontionさんに、いままでの経緯、現在の状況や希望などを説明し、現在でもPCMデジタル変換の環境をお持ちであるなら、ご協力いただけないだろうか、とお尋ねしたところ、テープも機材も古いため保証はできないが、それでよければお請けしましょう!というお返事をいただきました。そうして遂に!20年来の「デジタル変換」という希望が叶うことになったというわけです。

 

このような長い紆余曲折を経て、アルバム完成から20年目の初!デジタル変換、24bitディエンファシス版が遂に完成したわけですね。

 

 

ラウドネス・ウォー(音圧戦争)

 

もう一つ、今回のマスターでやってみたいことがありました。
昨今のリマスターについて、一部から非常に批判の多い問題が一つあります。それは「音圧戦争(音圧競争とも言う)」です。

 

僕がこのアルバムを録っていた当時、レコーディングやCD制作について「一般人が」出来ることは大変限られていました。全て手作業だったため、同じミックスを再現することは不可能でしたし、一度ミックスして「2MIX マスター」を作ってしまうと、それを加工することも非常に難しかったのです。せいぜい、コピー時にレベルを調整するとか、その程度しかできません。なので、例えば今のように「少々不揃いでも最後のマスタリングで綺麗に揃えればいいや」など後回しには出来なかったのです。なので、2MIX製作時に「完成版に近い状態のもの」を作らなければなりませんでした。そういう意味で、今回のアルバムの11曲は、全曲、マスタリングが不要なくらい、ちゃんと、あらかじめ揃えてMIXが作られているのです。
今回のリリースにあたって、それをそのまま活かしたいと。つまり、当時しっかり練って考えられていたダイナミックレンジやレベルなどを、そのまま加工せずにリリースしたいと考えました。そのまま、ということは、リマスターしない、ということです。音圧も上げず音色も加工せず。そもそも、それで大丈夫なように作ってあるのだから、余計な作業は要らないのだ、ということです。そうして「圧縮しない」マスターが、どんだけダイナミックレンジがあるのか、そこを是非、聴いて欲しいと思ったのです。

 

音圧がなく迫力がない、と言っても、それは同じ音量で比べるからで、普通にヴォリュームを上げていけば迫力ある音になりますし、むしろ、その強弱が豊かなダイナミックレンジや奥行ある音像に、初体験の方は新鮮な感触を覚えるかもしれません。

 

Karajimbeam95Karajimbeam16b 95年末のロン毛髭面写真 & 20年後の同じく記念写真w

 

 

★ということで長々語ってまいりました。シャーロック・ホームズばりの調査力と根気で、陽の目を見ることが出来た「20年目の真性リマスター」。是非とも、みなさまも味わっていただきたく存じます。そして、瑞々しい僕の作品のなかに、例えば現在の「ミルクセーキ仕事」の原点を見てみていただければとても嬉しいです!

 

Hunabashi96

 

 

*「プリ・エンファシス」について。
元のPCMデジタルデータに「プリ・エンファシス」という、デジタル量子化ノイズ除去の処理が施されている。今回のデジタル変換で、このデータを「ディ・エンファシス」。エンファシスによる「量子化ノイズの改善」を活かすためには下方向のbit拡張が必要になる。元の16bitのままではエンファシスのDレンジ拡大効果が100%活かされないため24bitで変換しなければならない(エンジニア pontionさんの説明より)。

 

 

おまけ!
「それぞれの夏休み」 コーラス overdub 1996
「ひつじ Songs」ラスト曲「それぞれの夏休み」に、KAYOと自分のコーラスを重ねていま­す。

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