「無圧縮 ひつじ Songs!」20th アニバーサリー!
★ミルクセーキ唐P の原点!
1996年リリース「ひつじ Songs」20周年アニバーサリー・バージョン遂にリリース!★初の「真性デジタル・リマスター」版。当時のオリジナルPCMマスターからデジタルデータを直接24bitトランスファー。★そのマスターをハイレゾで最大限に活かすためリミッター無しの非圧縮マスタリング!★20年目のエンディングトラックを追加した完全版!
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*1年間限定だったため当作の配信は終了
→ 無圧縮のこり2タイトルはコチラ
10年ひと昔と申します。では20年はふた昔となるのでしょうか。そして今この記事を読んでくださっている皆様、20年後の自分、というものを想像したことがありますでしょうか。
僕の実質デビュー・アルバム「ひつじSongs!」が完成して、なんと今年で20周年となります。自分の中で「卒業制作」と位置づけて制作に入ったアルバム。ラスト2曲の「君が好きだよ Song」そして「それぞれの夏休み」がレコード会社の方々の耳に留まり、僕はメジャーで作家デビューすることができました。つまり、このアルバムがなければ、今現在、こんなことをしていない、ということになるのですね。
いま僕自身が、こんな20年後を想像できましたか?と言われると、正直わかりません。でも、作品そのものについては、今も当時も素晴らしい物を作ったという自負があります。もちろん「自分比」ですけどね。
ということで、20年経ち、もういちどシビアなリマスターを施して、当時の完成度とやらを検証してやろうじゃないか、と。そんな想いから、20年目の再リマスター、しかも「初のデジタル変換!」というスペシャル仕様でハイレゾ配信のみ!という、記念すべきリリースとなりました。
今回のデジタル変換について
*レコーディングで使用したマルチ。→TASCAM DA88(48kHz、16bit)。
*ミックスで使用したミキサー。→MACKIE CR-1604(アナログ)。
*マスターで使用したテープ。→PCMプロセッサ(44.1kHz、16bit)。
*PCMマスターに施された「プリ・エンファシス」のDRを活かすため24bit 拡張変換(*)。
★結果として20年目にして初の!デジタル44.1kHz、24bitハイレゾマスターが完成!
(Digital Transfer by pontion.)
今回のマスタリングについて
今回は「無圧縮」というポリシーがあったため、コンプレッサー、リミッター等は通していません。また、オリジナルの質感を活かすためイコライジングもしていない。全体的に、ピーク直前となるレベル、4デシベルだけ上げた。またフェイドアウトに問題があるトラックが幾つかあったので、そこのみ修正しています。
20年目のエンディング曲を、ボーナストラックとして追加!
これは今回作ったものではなく、当時からすでに存在していたものです。したがってマスターも当時のものです。元々このトラックをアルバムエンディングとして予定していましたが、リリース直前になって「やっぱり蛇足ではないか」と感じ削除しました。今回はそれを「20年目の句点」として復活させ、完全版としました。
参加している人(Thanks to)
Guitars by Umada(Tr2・Tr4・Tr7) / Chorus by Kayo(Tr7・Tr10)
Photo by ヒロヒロユキ / Design by souhaku(2016)
聴いた皆様からの反応をまとめました!
http://togetter.com/li/976598
ちょっと長めのヒストリー
「ひつじ Songs!」のマスターは「PCM」という、当時でも非常に珍しいフォーマットで録られていました(業務用としてはCD用のマスタリングとして標準規格でしたが、民生用としては使っているヒトはほとんどいなかった)。
このPCMというのは、DATの前身と言える規格で、90年台にはDATにほぼ置き換えられ、僕のようなPCMを使ってる一般人は居なくなりました。つまり、これを再生できるのはもう自分だけ、という、絶滅寸前希少動物のような存在になっていたのです(僕がDATに乗り換えなかった理由はまた次の機会に)。
*参考資料
PCMプロセッサー
Wikipedia http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/pcm-501es.html
さて御存知の通り、CDやMD、そしてDATというデジタルメディア再生機には、当たり前のように「オプティカル」「コアキシャル」と言ったデジタル出力があります。これを使用すれば、古い音源だったとしても、現在でもデジタルのままパソコンなどに取り込んで劣化なしで変換ができます。
ところが、僕の使用していたPCMには、デジタルデータでありながら、デジタルアウトがついていなかったのですね。いまの常識で考えると不思議ですが、当時は、デジタル信号を出力する、という用途が日常的になかったので不必要だったのです。後々、僕の旧譜をリマスターする際に、この事実が大変なネックとなりました。
2006年、最初のリマスター版をリリースするとき、この「デジタルデータなのにデジタル変換できない」という壁にぶち当たり、マスタリングエンジニアとも方法を模索したのですが、結局、アナログで取り込むしかない、という結論になりました。というわけで、2006年リマスター(今まで売っていたもの)は、PCMを「アナログでアウトし」PCに取り込んだマスターなのです。
その後も僕は、このPCMデータのデジタル取り込みについて諦めませんでした。デジタルなんだから、デジタル出力する方法があるはずだ!という一途な思いで、方法を探り続けていました。ちょうどその頃からインターネットが盛んになり、いろんな情報が読めるようになりました。そうして日夜ネットサーフィン(死語)に励んだ結果、大変重要な情報を得ることになったのです。
それはなんと「デジタルアウトが付いているPCMの存在」でした。これは僕の持っていたPCMプロセッサの後継機種でして、民生用PCMとしては、コレが最終型でもありました。当時の僕は、そういう機種の存在をまったく知らなかった。驚くべきことでした。
*後継最終機種
http://audio-heritage.jp/SONY-ESPRIT/etc/pcm-553esd.html
さっそくこの機種についての情報を集め始め、入手可能なのか、スペックはどうなのか、などいろいろ調べていったのです。そうして情報を集めた結果、以下の様な事が分かりました。
まず、機種そのものはネットオークションなどで、必ずしも「入手困難というわけではない」こと。
もうひとつ(ココが重要!)当時のPCMシステムは「音質向上のため、録音時に「エンファシス」という加工がされ、再生時にそれをディ・エンファシス(デコードのようなもの)するという行程がある」ということ。そしてデジタルアウトを使用した場合に限り、なんと!ディ・エンファシス「されずに」アウトされる!
つまり、この後継機種を僕が入手したところで、加工された音源を「ディ・エンファシス」できる環境がなければ、元の音質のままのデジタル変換にはならない!という事がわかったのです。…こうなると途方に暮れますね。どうやら自分の手に負えるような案件ではなさそうだ、というように、一気に絶望感が大きくなってきたのでした。
それでも諦めきれず、これに関する情報はないものか、なんとか方法はないのだろうか、と引き続きネットを丹念に検索し続けたところ、とある「超マニアックなオーディオに関する掲示板」にたどり着いたのです。その掲示板の、過去10年間に渡る過去ログのなかに、なんと!PCMのデジタル変換に関する話題を発見!そして!その中の投稿者のお一人が、「ディ・エンファシス」について、それが可能な環境を持っている、と書かれていたのです!
その方の投稿にはメールアドレスが掲載されていました。10年前の掲示板。そこに記載されているメールアドレス。果たしていまも有効だろうか。しかし、もうコレしかツテがないのです。僕は一縷の希望を託して、ダメ元でそのアドレスにメールを送付しました。すると!なんと返信が!!10年前のアドレスが生きていたのです!
その方(pontionさん)は音響関係&電子回路の設計者で、なんとプロの方でした。これは心強い。お任せ出来そうだ、と一気にテンションが上りました。
pontionさんに、いままでの経緯、現在の状況や希望などを説明し、現在でもPCMデジタル変換の環境をお持ちであるなら、ご協力いただけないだろうか、とお尋ねしたところ、テープも機材も古いため保証はできないが、それでよければお請けしましょう!というお返事をいただきました。そうして遂に!20年来の「デジタル変換」という希望が叶うことになったというわけです。
このような長い紆余曲折を経て、アルバム完成から20年目の初!デジタル変換、24bitディエンファシス版が遂に完成したわけですね。
ラウドネス・ウォー(音圧戦争)
もう一つ、今回のマスターでやってみたいことがありました。
昨今のリマスターについて、一部から非常に批判の多い問題が一つあります。それは「音圧戦争(音圧競争とも言う)」です。
僕がこのアルバムを録っていた当時、レコーディングやCD制作について「一般人が」出来ることは大変限られていました。全て手作業だったため、同じミックスを再現することは不可能でしたし、一度ミックスして「2MIX マスター」を作ってしまうと、それを加工することも非常に難しかったのです。せいぜい、コピー時にレベルを調整するとか、その程度しかできません。なので、例えば今のように「少々不揃いでも最後のマスタリングで綺麗に揃えればいいや」など後回しには出来なかったのです。なので、2MIX製作時に「完成版に近い状態のもの」を作らなければなりませんでした。そういう意味で、今回のアルバムの11曲は、全曲、マスタリングが不要なくらい、ちゃんと、あらかじめ揃えてMIXが作られているのです。
今回のリリースにあたって、それをそのまま活かしたいと。つまり、当時しっかり練って考えられていたダイナミックレンジやレベルなどを、そのまま加工せずにリリースしたいと考えました。そのまま、ということは、リマスターしない、ということです。音圧も上げず音色も加工せず。そもそも、それで大丈夫なように作ってあるのだから、余計な作業は要らないのだ、ということです。そうして「圧縮しない」マスターが、どんだけダイナミックレンジがあるのか、そこを是非、聴いて欲しいと思ったのです。
音圧がなく迫力がない、と言っても、それは同じ音量で比べるからで、普通にヴォリュームを上げていけば迫力ある音になりますし、むしろ、その強弱が豊かなダイナミックレンジや奥行ある音像に、初体験の方は新鮮な感触を覚えるかもしれません。
→
95年末のロン毛髭面写真 & 20年後の同じく記念写真w
★ということで長々語ってまいりました。シャーロック・ホームズばりの調査力と根気で、陽の目を見ることが出来た「20年目の真性リマスター」。是非とも、みなさまも味わっていただきたく存じます。そして、瑞々しい僕の作品のなかに、例えば現在の「ミルクセーキ仕事」の原点を見てみていただければとても嬉しいです!
*「プリ・エンファシス」について。
元のPCMデジタルデータに「プリ・エンファシス」という、デジタル量子化ノイズ除去の処理が施されている。今回のデジタル変換で、このデータを「ディ・エンファシス」。エンファシスによる「量子化ノイズの改善」を活かすためには下方向のbit拡張が必要になる。元の16bitのままではエンファシスのDレンジ拡大効果が100%活かされないため24bitで変換しなければならない(エンジニア pontionさんの説明より)。
おまけ!
「それぞれの夏休み」 コーラス overdub 1996
「ひつじ Songs」ラスト曲「それぞれの夏休み」に、KAYOと自分のコーラスを重ねています。