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2012年7月15日

ベースボールとエルビス・プレスリー

最近よく、30~40代の人々や、所謂「団塊ジュニア世代」の人々は、この街ではドコに行るの?と尋ねられる。うん、どうも周りには見当たらない、と答えたのだけど、最近、居るところには居るようだと気付いたのよね。

渋谷系のようなもののお陰で僕は、自分のルーツに気付くことは出来たけど(過去のエントリ → 岸辺のアルバム)、しかし、実は、ぶっちゃけて言うと「渋谷系」というもの、そのものは自分は好きではなかった。発想はよかったけど、曲が水準に達してないので(また主観だろと突っ込まれそうだがw)、なんだこれ、って思ってて、それは僕だけじゃなく、周りの友人の反応も同じだったから「自分とは別な世界の出来事」と思って過ごしてた。

ただ僕の場合、昔のエントリで書いたように、自分のルーツである、と気付いたこともあって、これをヒントに似た路線でもっと自分は極めたことをしたい、と思い、それが僕の初期のスタイルになった(それぞれの夏休みとか)。だからあれらは、渋谷系の人たちにも受けはよかったよ。それで自分は溜飲を下げた感じ。

渋谷系の音楽は一貫して「出来損ない(いい意味で)」が売りだったが、ひとつだけこれはすごくいい、と思ったのがあって、それが Chocolat だった。彼女も歌は上手いとは言えなかったんだけど、それよりなにより、ともかく「楽曲とアレンジがちゃんとしてて」、これこそ「渋谷系の完成形!」だと、僕は思った。ヘタウマで出来損ないで、しかし楽曲とアレンジの完成度は高い、という双方の「いいとこ鳥」、つまりこれこそ「渋谷系の最終形」だな、って思ったのね。だから、ショコラは今でもよく聴く。というより、僕は渋谷系はショコラしか聴かない。と言ってもいいかもしれない。

渋谷系やサブカル系の雑多な感じ、つまみ食いで多趣味な感じは、思えば、この街の雰囲気にも似ているのだ。細かい魅力がたくさんあり題材に困らない、街にあるいろんなものをつまんで歩いてるだけで、じゅうぶん楽しい。これは実にサブカルに向いているのではないか、と思ってる。

そうして、そういうムーヴメントの原動力となってる、30~40代や団塊ジュニア世代も、そういうところに集まってるのであろう。と思った。

目立つ部分での「渋谷系」は、もう終わっているだろうが、各地で小さなムーヴメントとして生き続けてるんだと思う。それがクラブイベントやマニアックなDJイベントとなって、小規模で毎週末どこかで行われていて、そういう場所に、そういう年齢層の人々が、ドコからともなく集まってくるのだ。

町を歩くと、小洒落た道沿いの店の片隅に、小さなグッズが売ってあったりする。手書き風のイラストカードだったり、アクセサリーだったり。そういうものすべてに、どこか渋谷系の雰囲気を感じる。そして、そういうものを作って並べてる人々こそが、「どこにいるんだかわからない」と僕が言った人々の、所在なのだ。


先のエントリで書いたように、この「最終形」の正統な継承者が、田中ヤスタカ氏だと僕は思っている。最近「きゃりーぱみゅぱみゅ」のアルバムを聴いたが、その完成度は寸分の狂いも迷いもなく、継承されていた。これこそ、前回書いた「メソッド系」の到達地点でもある。渋谷系の最終型は、メソッド系の到達地点でもあるのだ。

ちなみに、渋谷系とメソッド系とオルタナ系が合体して完成したのが、椎名林檎の「正しい街」である。

沈まない船は、こうして着々と創られている。安心してはいけないが、かと言って悲観すべきものでもない。未来は、そういう人々のものであるのだから。


【追記】
2012年12月。
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