宝島にみる人物類型
ネットで、ある人々の会話を見ていたら、「ベンボウ提督亭」という言葉が出てきて、「あれ、聴いたことある言葉だな、なんだっけー」と思って調べたら世界の名作「宝島」に出てくる言葉でした。そんな感じで検索したら全文読めるサイトが出てきて、なつかしーーーと思って久々に読みハマってしまいました。
http://www.servicemall.jp/sokudoku/BN/s/0014001.html
だいたいのストーリーは憶えてましたが、ほとんど忘れてました。それでも、ハラハラドキドキで、最後まで一気に読んだ。おもしろい話だなあ。
そんで気付いた事が二つばかしあったんです。
ひとつは、私Led Zeppelinのライブ研究サイトを書いてますが、イギリスの地名とかは、この作品などの児童文学を多数読んでたので、馴染みがあって、なんとなく土地の空気感のようなものもわかるのは、これのおかげだーって思ったこと。
そんでもうひとつは、登場人物の見事な類型化でした。子供向けの小説だから、凄く判りやすく出来てて、でも、それでも当時の僕にはわかってなかった事がいろいろありました。
まず、主人公のジムが以外に気まぐれで身勝手だったこと。これはびっくりしましたが、正直でかえって共感もてました。子供ながらに駆け引きやらいろいろ考えてますね。
それから、なんと言っても凄かったのは片足の海賊、ジョンシルバーの狡猾さです!
これは子供の頃は読めてなかったなあ。いや、確かにずるい人とは思ってたけど、当時こういう人には縁がなかったし、実感がわかなかった。でも今回読み直してみると、どこかの誰かさんそっくりだった!笑。ホントに見事です、これ。
それから、大地主のトレローニさん。
見栄っ張りで、秘密を守れず、すぐに騙される。今回もシルバーにあっけなく騙される。それは、本人が宝島の事をべらべらバラすから。自業自得。
それから船長。
これは見事にリーダー。上の大地主とはそりが合わない。厳しいからね。嫌われ者。規律第一。しかし事実が発覚したあとはみんなが一目置く。
それから、リブジーさん。医者で法律家。これも見事に理想の引き締めやですね。
あとは海賊達ね。
これは陸にも海にも多数出てきます。いろんなタイプが居ます。お宝を強奪すると、あとさき省みず一気に使い果たす浪費タイプ。堅実に資産として増やして生きるタイプ。そして、浪費タイプにも、憎めず人に面倒見てもらうタイプと、破天荒で、結局乞食や盲目になってしまう人も居ます。後者のタイプは、いつまでも強欲で仲間の分け前を奪おうとしたりします。
それから、一番最初に、ジム少年と母親が危機に陥ったときの村の人々の態度。これは、見事に村社会です。かかわりたくない、知らない、と逃げる。でもその中のたったひとり、少しは良心ある若者が、隣町まで、警備隊みたいなものを呼びに行ってくれる、と。これはうれしいね。
あとね、
宝の地図を持ってた、元海賊ビリーボーンズもジョンシルバーも同じ事を再三、話の中で言うのですが、浪費するな、と。お前らと来たら金を渡せばすぐに全部使っちまう、と。後先考えろ、と。
これが、良識組ではなく、海賊組の側からしかも2名から出ているというのは、僕も今回意外に思って、子供向け小説って啓蒙とかも兼ねてるでしょ。そういうこと言いたいってのはあるなあと思った。舞台は18世紀ですが、小説が書かれたのは19世紀ですね。いろいろ近代が始まるにつれ起こった問題をなんとかしたいというような部分もいろいろ読み取れたりします。
オトナ用の、たとえば舞台脚本だったりすると、こういう、いかにもな設定は、ベタ過ぎてあれなのかもしれないけど、子供向けとして、その判りやすさに徹底してる様子は、ぼくにとっては、かえって新鮮だった。しかも大人のずるさや、人間の弱さなど描いてるし、何世紀も残る名作ってのは、こういうもんだな、ってつくづく思ったね。
ということで、皆さんも是非、読んでみては?
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